図より、相馬、仙台港、石巻市、大船渡、釜石、宮古では、潮位の急激な変化を示した後、測定データが失われている。地震の震動には測定機器は耐えたが、その後の大津波によって、潮位計の計測システムに不具合が生じた事がわかる。相馬の南に位置する大洗のデータから類推すれば、地震発生後の2時間の間に、少なくとも二つの大きな津波が襲来した事が推定される。
3月21日の毎日新聞配信の次の記事がある。
東京電力福島第1原発周辺で、14メートル以上の津波が押し寄せた可能性があることを21日、経済産業省原子力安全・保安院が明らかにした。設計時に想定した津波の高さの3倍近い。東電と保安院は、津波が原発の安全の根幹にかかわる原子炉の冷却機能を喪失させ、今回の事故につながったとみており、他の原発でも再検証が求められるのは必至だ。記事が伝えるように、「想定外」の津波により、外部受電設備が水没して、原子力発電所は、全停電状態となった。更に、非常時に使う緊急炉心冷却装置(ECCS)を駆動する非常用電源も津波の為に使えなくなり、まさに非常事態に陥ったのである。こうした事が1〜6の全ての原子炉に生じた事も、事態を更に悪化させる原因となる。
保安院は同日午後の会見で、「津波の高さは一番高い所で(水が)触れたものを見れば分かる。未確認だが、14メートルの高さの駐車場を超えていると聞いた」と説明した。東電が同原発で設計時に想定した津波の高さは約5メートル。津波は浅い海岸付近に来ると波の高さが急激に高くなる特徴があるほか、連続して押し寄せるため、沿岸に到達した津波の高さ以上まで駆け上がる。
今回、同原発では、3号機を襲った東西方向の揺れの強さが507ガル(ガルは加速度の単位)と、保安院が耐震安全の基準値として認めた数値の1・15倍だったのを除き、揺れはおおむね基準値を下回った。しかし、敷地内にある原発に送電するための鉄塔が倒壊。さらに津波の影響で、原子炉を冷やすための緊急炉心冷却装置(ECCS)を駆動する非常用電源が6号機を除いて使えなくなり、外部からの受電設備も水没して事態を悪化させたとみられる。
東電は今回の事故を、設計時の想定を超えて炉心の損傷につながるような「過酷事故(シビアアクシデント)」と認めている。保安院によると、東電は複数の対策シナリオを国の指示で02年に作成したが、津波による被害は考慮されていなかった。国の「原子力白書」でもシビアアクシデント発生の可能性について「工学的には考えられないほど低い」などとしていた。