上図によれば、原子力の発電コストが最も安いので、経済原則から判断すれば最も推進すべきエネルギー源という事になる。ところが、2010年9月の第48回原子力委員会において、電気事業連合会によるコスト評価は間違いであるという意見が立命館大学の大島教授により述べられ、エネルギーコストの試算結果が公表された[93]。これは原子力政策大綱見直しのための、各界から様々な意見を聴く有識者ヒアリングの場で公表されたものである。
大島堅一教授の試算によれば、原子力の発電コストが安いという電気事業連合会の計算結果は、本来は組み込むべきコストを勘定に入れていないまやかしであり、正しく計算すれば、原子力は一番割高な発電方式となる。しかも、この発表時は福島原発事故前であり、事故による膨大なコストは評価に含まれていない。
大島教授のレクチャーから要点を図により引用する。
大島教授の試算によれば、費用を適切に勘定した場合の原子力発電コストは10.68円となり、火力発電よりも高い値となる。更に、揚水発電は原発とセットにされている事が多いので、揚水発電コストを原発コストの中に入れる事は、ある程度の根拠があると考えられる。その場合、原発コストは12.23円となり、電気事業連合会の5.3円の2.3倍となる。大島教授が示されたような手順を、電力会社は敢えて無視をして、「一番安い」という結論が得られるように、色々と工夫を重ねたと推察する。
福島原発事故後に、大島教授は先に引用したレポートを改訂されたレポートを公表されている[95] 。そこから、結論だけを引用しよう。
筆者は電源別コスト計算の詳細については詳しくなく、大島教授のレクチャーをここに引用した。教授のコスト計算の大枠は正しい結果を生み出す設定と思われる。
加えて、発電後の費用(バックエンド費用)は原子力に固有で且つ適正に勘定すれば膨大になる可能性があり、又、一旦大事故が起きた場合には、通常の勘定では電力会社の存続さえも難しくなるほどの被害補償費用が見込まれる。そのように考えれば、原子力コストは、本当は異様に高いというべきではないか。
財界は経済合理性と同時に、社会全体の利益も勘案できる知性と判断力を兼ね備えているべき団体であると思っていた。社会の将来を見据えて、大きな舵取りを示すが故に、単なる経済界代表以上の存在価値もあった。昔の名の知れた財界トップにはそのような分類に入る人材がいたかもしれない。現在はどうであろう。東電社長は事故時に経団連副会長であった。その経団連トップが今回の原発事故に対してどのような発言をしているか。経団連は事故の加害者なのか被害者なのか。発言を聞いていると、妙であるが、電力業界のスポークスマンの如くであり、国民に対する加害者意識は何ら持ち合わせていないようだ。これまでの電力推進の経緯からして、福島県民と同程度の被害者であるとは到底いえまい。日本にはかつて名の知れた財閥がいくつか存在し、今でもその系譜は存続している。中でも住友は、良く言えば経済合理性において特徴があると言われていた。現在の経団連はその特徴を妙な形で受け継いでいるようだ。郵政の資産払い下げ問題が起きた時も、住友系のトップだったと記憶している。こうした事例を住友家訓の発露と思ってもいいのだろうか。