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5.5 茨城県とつくば市の放射線量測定

 原発近県では自治体が自主的に放射線を測定して公表する展開となっている。そこで、茨城県とつくば市について、その結果を検討したい。
 新聞TV等で報道されるつくば市の放射線量は、0.15マイクロシーベルト/時間(2011年5月25日)程度である。茨城県つくば市では、市内の小中学校等で放射線測定を行い、その結果を公表するという作業を5月の末に行った。5月27日公表結果を簡単にまとめると次のようになる。

参考データ:つくば市校庭等放射線量測定結果(平成23年5月27日測定)
 小中学校の校庭では、生徒は地面近くに滞在する場合が多々ある。そこで、つくば市のデータ中の地表付近の測定値を本節では使用する。地表1mの測定値に比べると、このデータでは、平均値で21パーセント大きくなる。
 つくば市内の分布状況をみる為に、つくば市のホームページに公表されている防災地図に、放射線測定結果をプロットして示す。

図 5.16: つくば市内の小中学校の放射線量測定結果(5月27日)。赤いバーは、その地点の相対強度を表わす。図の右側中程に基準値(0.1マイクロシーベルト/時)のバーを示す。元図はつくば市ホームページに掲載されている「つくば市防災マップー(1)揺れやすさマップ」を使用。筆者作図
\includegraphics[width=20cm,clip]{tukubaschoolrad-map50p.eps}

 この図から、市の南部において、放射線強度が強く、北部では弱い事がわかる。この傾向は、茨城県内31市町村における放射線量率測定結果と矛盾しない。
 次に茨城県の市町村の測定値とつくば市内の学校での測定値を図示する。

図 5.17: 茨城県内市町村の放射線量測定値(5月25日)とつくば市内の保幼小中学校の測定値(地表付近、5月27日)を、同じ図に示す。縦軸の単位はマイクロシーベルト/時間。横軸の測定場所名はサンプル値が示してあり、全部のデータには対応していない。図中の緑色の横線は、つくば市にある高エネルギー加速器研究機構で採用されている放射線管理規定の周辺管理区域のレベルを示す(第5.3節)。筆者作図
\includegraphics[width=20cm,clip]{ibaragiscrad.eps}

 茨城県公表データの中では、つくば市は0.085マイクロシーベルト/時間である。この値ならば、多くの人が何の懸念も抱かず安心するのではないか。しかし、つくば市各地の小中学校等の測定結果によれば、場所により0.057(0.055)〜0.368(0.278)と大きく分布している。地表付近の測定結果という事を考慮しても、「放射線管理規定の周辺管理区域(0.2マイクロシーベルト/時間)」を越える場所が何カ所もある(図5.17)。測定場所を増やせば、更に放射線量が高い場所が見いだされる可能性も存在する。従って、そんなに心配するレベルではないが、手放しで安心していてよいレベルでもなく、0.2マイクロシーベルト/時間 以上の場所について、何か考える必要があるのかないのかを議論する必要があるというレベルであろう。
 この結果から見ると、茨城県公表のつくば市の値(0.085マイクロシーベルト/時間)は、つくば市を代表する値としては、不適切と思われる。この不適切の由来は、検証する必要があるだろう。
 最後に、比較の為に、福島県の学校の放射線測定結果を図5.17と同じ形式の図にしてみよう。但し、縦軸は10倍のスケールになっている。使用したデータ[70]は第5.3節の図5.11と同じである。

図 5.18: 福島県環境放射線モニタリング小中学校測定結果(4月5日)。地表1cmの測定データを使用。縦軸の単位はマイクロシーベルト/時間。横軸の測定場所名はサンプル値が示してあり、全部のデータには対応していない。筆者作図
\includegraphics[width=20cm,clip]{fukushimascrad.eps}

参考資料


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Kozan 平成23年8月1日