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3.6.1 プラントパラメータの推移

 電源喪失シナリオによれば、早期に炉心損傷が起こり、格納容器の破損につながる。その過程で、炉心中の金属反応で発生した水素が格納容器に移行する。格納容器圧力が高まると、水素は外部に漏れ出して、外部建屋に充満して、水素爆発の危険がます。従って、原子力発電所内のどの部位においても、水素爆発の要件を満たせば、爆発が起こる可能性が存在する。爆発の威力が大きいので、その後の状況が極度に悪化する事は容易に推定されることである。この水素爆発を阻止できるのかどうか。事故の重大化の分岐点であった。
 発電所全停電の時に、どのようにして原子炉運転パラメータ(温度、圧力、水位、流量など)が取得できたかについて、筆者は情報を得ていない。測定系に損傷がなく、バッテリー駆動が可能なものは、ある場所においてはパラメータ取得が出来たであろう。おそらくタイプの違う計測器を設置している可能性が高いので、測定原理が簡単な計測器は、測定値の指示を入手できる可能性がある。コントロール室は全停電状態と聞いているので、そこには測定値の電気信号は来ない。コンピュータも止まっており、所内の通信回線も止まっていたと推定される。現場のモニター部署であれば、電気信号変換前のシグナルを直接目視できるタイプの計測器が存在した可能性もある。というわけで、事故後のプラント運転パラメータは極度に不足している。
 公開されたデータを元に作られた事故直後からの1号機原子炉パラメータを下図に示す。出典:原子力情報資料室資料サイト

図 3.23: 1号機のプラントパラメータの推移:3月11日〜12日
\includegraphics[width=14cm,clip]{plantpara1.eps}

図 3.24: 1号機のプラントパラメータの推移
\includegraphics[width=14cm,clip]{plantpara2.eps}

3.233.24について検討する。

 4月8日に公開された事故初期のプラントパラメータ[50]を図示した。
図 3.25: 1号機原子炉水位の変化
\includegraphics[width=14cm,clip]{plotgsrvwlevel-1.eps}
水位ゼロは、燃料頂部を意味するという。従ってマイナス表示は燃料が露出している事を意味する。燃料棒の長さは約4mなので、測定値が正しいとすれば、核燃料の半分露出の状態が継続している。
図 3.26: 1号機原子炉圧力の変化:ゲージ圧
\includegraphics[width=14cm,clip]{plotrvp1.eps}

図 3.27: 1号機ドライウェル圧力変化:絶対圧
\includegraphics[width=14cm,clip]{plotdwp1.eps}
注:
公表された初期データは、それぞれの元データから集計されていると思われるが、そのまとめ作業の過程で修正されたと思われる部分に以下の箇所があり得よう。元データの取得が難しかった可能性があるし、手入力によると推定されるミスもある。
1号機:3月12日〜13日、3月14日〜17日
2号機:3月13日〜16日
 格納容器圧力(DW:ドライウェル)は12日に0.941MPaを記録している。この値は設計値の2倍以上であり、この時点で破損を生じる可能性が高まっていた。12日14時40分のベント開始で、急激に圧力は減少する。
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Kozan 平成23年8月1日